ひとり親家庭のための、ウタリくらぶ

ウタリくらぶでは、ひとり親家庭に役立つ情報をお届けします。

【取材してきました vol.017】札幌大谷大学・梶井祥子教授:第2回~配慮と寛容性が必要~

投稿:   更新:2018/02/09

カテゴリー:北海道 札幌市 地域別情報 特集記事

面会交流についての梶井教授のご意見を伺った今回の取材記事。「思いやり」に基づいた『配慮と寛容性』の必要性や外的条件などを語ってくださいました。どうぞご覧ください。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

今回は、札幌大谷大学社会学部地域社会学部・学部長、梶井祥子教授にお話をお伺いしました。

梶井教授は、かねてから約30名の親の離婚を経験している子どもに対する調査研究を行い、一昨年にも離婚に関わる様々な立場の方、100名に大規模な聞き取り調査を行われています。
子どもたちが自ら手を上げ語った思いと、研究者として中立的な見解を、熱意をもって語ってくださいました。ぜひ、ご覧ください。(この記事は、2回に分けて掲載いたします。)

ウタリくらぶは中立的な立場で取材先様のリアルな発言を記事にしています。

←【第1回~『面会交流』への慎重な配慮~】を読む

***

『夫婦が交渉のテーブルにきちんと座る』ために

●札幌大谷大学社会学部長・梶井祥子教授(以下、梶井):
私はこの間、スウェーデンの調査に行ってきました。
ご承知のように男女平等が実現している社会です。
離婚率も日本の2倍くらいの割合でしょうか。
離婚することになった夫婦は、一つのテーブルについて、子どもの養育費、住居、面会交流のことなどをしっかりと取り決めます。
ここで重要なのは『夫婦が交渉のテーブルにきちんと座る』ということです。
対等にコミュニケーションできる関係が成立している。

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
男女平等が叫ばれているとはいえ、まだ日本では男尊女卑の傾向は否めないですよね。

●梶井:
日本の社会では、まだまだ社会構造的に女性の方が不利な立場に置かれているので、経済的な困窮に直面することも少なくありません。
間接強制は、そこに畳みかけるようなきわどさがあります。

●西川:
確かに、両親そろっている方がベスト、という論理は正しいかもしれませんが、
『では、なぜ別れざるを得ない理由があったんでしょうか』ということが、もみ消されていますよね。

●梶井:
離婚という選択をするときには、夫婦の愛が壊れているわけですから、なかなか一緒に交渉のテーブルにつくということが難しい場合もあります。
子どもの最善の利益を追求していくには、理想としては、社会的、法的にも男女平等が保障されていて、そのうえでそれぞれの主張ができるような外的条件が必要だと思います。
やみくもに夫婦や親子の絆を強調することは、本当の家族の幸福とは結びつかないのではないでしょうか。

[リンク]親子断絶防止法全国連絡会

●西川:
日本の社会がまだ、男女平等においては成熟していないのに、急に欧米と同じように対等に交渉することはできませんよね。

配慮と寛容性

●西川:
あるかつてひとり親家庭の子どもだった方から聞いた話です。
北海道内のある地域で、貧困対策として、行われている支援の一つだったようなのですが、『ひとり親家庭の子どもだけに、文房具が配られてそれを持っていると、あの家は片親なんだとばれるのが嫌だった』と言っていた方もいます。
支援していただいたことをうれしいと感じられるか、差別されていると感じるかは、個人個人の受け取り方にもよる、と思ったことがあります。

●梶井:
ヨーロッパの国で文房具を配るなら、ひとり親家庭か、そうではないかに関係なく全員に配る。
そういうことを普遍的な支援として行うと思います。

●西川:
そうですね、義務教育の上で皆が平等の上で、さらに違う環境にいく権利がある。

[リンク] 親の姿を見て子は育つ!親が離婚すると子供も離婚しやすい理由
[リンク] 子供は親の離婚から何を学ぶのか?離婚が子供の将来に及ぼす影響とは?
[リンク] 親権と子の福祉 子どもへの影響(学術研究)

●梶井:
どういう状況に置かれていても、子どもたちの最善の利益を保障する社会でなければなりません。
面会交流については、寛容性を失っているということを指摘せざるを得ません。
冷静に交渉が出来ない、著しくどちらかが経済的に困窮している、対等に意見が言えないなどの状況であれば、それに対する配慮と寛容性が必要です。
私の調査では、親が離婚した子どもたちがまず求めているのは、落ち着いた環境です。
別れた夫婦が合意に達していないなかでの面会交流には、慎重な立場をとっています。

●西川:
取材で、子どもと会えていない親の苦しみについてもお伺いしたことがあり、『確かに夫婦関係がうまくいかなかったことには非があるかもしれないけれど、それが子どもとの関係を断ち切られるほどのことだったのだろうか』とおっしゃっていたことが印象的でした。
先生のおっしゃる通り、お互いに冷静に交渉のテーブルに座れなかったのだから調停や裁判になっているわけで、双方の主張が平行線で着地点がないという印象があります。
その方々は、大変穏やかにお話の出来るようでしたから、お辛い思いをしながら子どもに会えない悲しみを抱えて活動をされているので、いつかお互い良い形で話し合いができるようになり、お子さんともまた会えるようになったらよいのにと感じました。

●梶井:
やはり、別れた相手に対する思いやりを持たなければ、相手の心は開かないのではないでしょうか。
別れた夫婦が憎み合ったままであるなら、その間で板挟みになって子どもが面会交流をするのは、辛いでしょうし残酷でもあります。

●西川:
子どもは親の様子をよく見ています。
子どものための面会交流であれば、両親が納得した良い形で当日を迎えられるような関係性が必要ですし、欧米に比べて男女平等についての社会的環境が立ち遅れているとはいえ、それを言い訳に子どもたちの最善の利益が保障されないわけにはいきません。

●梶井:
寛容なコミュニケーションが開かれている社会が、子どもたちにとって重要で、救いになると思うんですよ。
今は、なんとなくそれとは逆行している。

●西川:
相手に対する配慮と寛容なコミュニケーションは、まるで北風と太陽のように、冷え切ったお互いの心も溶かし、子どもにとって一番良い方法を見出せる手段になると感じました。
今日は、多くの当事者に聞き取り調査をされた長年のご経験と学術的な見地から、たくさんの学びを得ました。
貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

編集後記

今回は、以前取材した『』についての記事をきっかけに、あるひとり親支援者から、札幌大谷大学の梶井教授が、離婚家庭で育つ子どもについての調査研究をしておられるので、中立的な立場からの意見を聞くようにとのご提案をいただき、実際にお会いすることができました。

また、その方から、『万が一あってはならない事故を防止するための、中立で公的な面会交流センターの創設など、まだまだ先に整備しなければいけない事はあると思っています。』とのご意見もいただきました。
法や制度が良い形で整備をされることも大切です。

ですが、そのためには時間がかかりますし、まずは、経済的な格差や、社会的立場によるハンディキャップを、高圧的に力でねじ伏せるようなやり方ではなく、それぞれの個別の事例に応じた、柔軟で細やかな配慮と寛容性をもったコミュニケーションが図れるように、当事者の歩み寄りの努力と、そのための支援が必要です。

私の友人で、いがみ合って別れた夫婦の間であっても、離れて暮らしてみて、子育てにおいて一番頼りになるのは元パートナーであったことに気付いた方や、共に暮らしているときは非協力的だったのに、離婚後に子育てについて積極的にかかわるようになったというケースも聞いたことがあります。

周りの環境が変わるのを待つのではなく、まずは自分から歩み寄ってみる、ということも大切ではないかと感じました。
子どもにとって身体的、精神的不利益が生じるような状況では、定期的な面会交流があったとしても、『あれは家族ではない』とジャッジされてしまうのではないでしょうか。

最大のポイントは、自分がどうしたいか、だけではなく『子どもにとって何が最善なのか』なのです。

夫婦間に入って面会交流を仲介し、その際に安全に子どもを見守ることのできる環境を用意するサービスもあります。

必要な情報は、求め続ければ与えられるはずです。
ぜひ手を伸ばして受け取ってほしいと思います。

また、次の会議の予定がありお時間がない中、別れ際に先生が私にアドバイスをくださった『夫婦関係には、それぞれのライフサイクルにおいていろんな波があるけれども、その時を乗り越えたら、あのときは大変だったなと思える時も来ます』とおっしゃったお言葉が印象的でした。

今回の記事のテーマは面会交流についてではありますが、研究者として多くの離婚家庭で育つお子さんと接してこられ、また一人の女性であり妻、母である梶井先生から、相手に対する配慮や思いやりの心を持つということの大切さ、何か問題を抱えたときに、寛容かつ柔軟に対処することについて、私自身も個人的に改めて気づかされました。(ウタリくらぶ記者・西川明子

***

ウタリくらぶの取材記事一覧へ

<札幌大谷大学社会学部地域社会学部学部長・梶井祥子教授 プロフィール>

札幌大谷大学教授、札幌市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科・社会学専攻卒、北海道大学文学研究科人間システム科学・修士。専門は社会学。
北海道新聞社勤務後、北星学園短大非常勤講師、北海道武蔵女子短大教授を経て2012年から札幌大谷大学社会学部教授。
共著書に「アンビシャス社会学」、「若者の『地域』志向とソーシャル・キャピタル」ほか。札幌市子ども・子育て会議副会長。北海道社会教育委員の会議議長など。(引用:「地域の中の高校生 梶井祥子」朝日新聞デジタル

【参考リンク】

【ウタリくらぶ内関連リンク】

【取材してきました vol.017】札幌大谷大学・梶井祥子教授:第1回~『面会交流』への慎重な配慮~

***

ウタリくらぶの取材記事一覧へ

投稿:   更新:2018/02/09

カテゴリー:北海道 札幌市 地域別情報 特集記事

ウタリくらぶに記事掲載をご希望の方は、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。

その他、制度改正等に伴い掲載された内容が最新のものと異なる場合などお気づきの点がございましたら、お手数ですが同様にお問い合わせフォームよりご指摘頂けますと幸いです。

ひとり親家庭の方々に役立つ情報発信に、皆様のご協力をお願いします。