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【取材してきました vol.017】札幌大谷大学・梶井祥子教授:第1回~『面会交流』への慎重な配慮~

投稿:   更新:2018/02/16

カテゴリー:北海道 札幌市 地域別情報 特集記事

今回の取材は大学の教授・梶井祥子氏です。研究者として『面会交流』について中立的な見解を語ってくださいました。どうぞご覧ください。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

今回は、札幌大谷大学社会学部地域社会学部・学部長、梶井祥子教授にお話をお伺いしました。

梶井教授は、かねてから約30名の親の離婚を経験している子どもに対する調査研究を行い、一昨年にも離婚に関わる様々な立場の方、100名に大規模な聞き取り調査を行われています。
子どもたちが自ら手を上げ語った思いと、研究者として中立的な見解を、熱意をもって語ってくださいました。ぜひ、ご覧ください。(この記事は、2回に分けて掲載いたします。)

ウタリくらぶは中立的な立場で取材先様のリアルな発言を記事にしています。

【第2回~配慮と寛容性が必要~】を読む→

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梶井祥子氏 プロフィール

札幌大谷大学教授、札幌市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科・社会学専攻卒、北海道大学文学研究科人間システム科学・修士。専門は社会学。
北海道新聞社勤務後、北星学園短大非常勤講師、北海道武蔵女子短大教授を経て2012年から札幌大谷大学社会学部教授。
共著書に「アンビシャス社会学」、「若者の『地域』志向とソーシャル・キャピタル」ほか。札幌市子ども・子育て会議副会長。北海道社会教育委員の会議議長など。(引用:「地域の中の高校生 梶井祥子」朝日新聞デジタル

[リンク]札幌大谷大学・短期大学部
[リンク]生涯学習研究e事典 親の離婚を経験した子どもたち(日本生涯学習学会)

取材のきっかけ

昨年、ウタリくらぶで「」についての学習会を主催している団体の取材記事を掲載したところ、当事者や支援者等、各方面からご意見をいただきました。

その中には、ひとり親支援者からの、DV被害者など面会交流をさせたくない事情があるひとり親の現状や、離婚家庭で育つ子どもについての調査研究を行っている研究者からの中立的な意見もぜひ聞いて欲しいというご要望がありました。

その際、北海道札幌市の大学教授による離婚家庭の子どもに対する長年の研究についてのご紹介をいただき、お電話にて大学に取材を申し入れました。
今回は、お正月明け早々に、お時間を割いていただき、貴重なご意見をいただいております。

【ウタリくらぶ内関連リンク】

【取材してきました vol.010】コトオヤネットさっぽろ・親子ネットさっぽろ:第1回~子どもに会えない『もうひとりの親』の声~

【関連リンク】

養育費の支払いと面会交流を関連付けることは危険

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
昨年、子どもと会えていない親の立場から面会交流についての活動をされている団体の取材記事を掲載したところ、様々な立場の方からのご意見をいただきました。
その中で、あるひとり親支援者から、『梶井先生は、離婚家庭で育つ子どもへの調査研究を行っているのでぜひご意見をお伺いしてみては』というご提案を、いただきました。
今日はご多忙中、お時間を割いていただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。

●札幌大谷大学社会学部長・梶井祥子教授(以下、梶井):
面会交流の推進が強く主張されるようになった背景には、母子家庭で経済的困難を抱えている世帯の割合が高くなっているというデータが明らかになったことがあると思います。
1960年代の前半までは、離婚の際に子どもを引き取るのは父親の方が多かったのです。
現在では、離婚した場合に母親が子どもを引き取る割合が8割前後です。

●西川:
では、戦後20年ぐらいは、父親側がひとり親家庭になる数の方が多かったのですね。

●梶井:
そうです。高度経済成長期に入って女性の就業機会が広がったことで、離婚した場合でも母親が子どもの親権を持つことができるようになったわけです。
最近の面会交流の推進についてですが、現場では対応に苦慮する事例が増えているということを複数の弁護士の方からお聞きしました。
例えば、面会交流を拒否した場合に「間接強制」ということがあるのですが、そこへ至るまでにも、かなり強硬に面会交流が実行されることがあるようです。
現場では困惑しています。
女性のひとり親家庭の経済的な困難に対応するために、面会交流で子どもと会わせれば、父親側からの養育費を確実に支払わせることができるのではないか。
そのような対策上の思惑があるとも指摘されています。
養育費の支払いと面会交流を関連付けることは危険です。
子どもの最善の利益とは言えません。

[リンク]裁判所 間接強制

●西川:
はい、面会交流を推進する活動をしている方も、母子家庭の貧困は実は、受け取れるはずの養育費を何らかの理由で拒否している、または子どもに会せないなら養育費を出さないといった問題が、少なからず関係している、とおっしゃっていました。
以前のように、子どもを養育する側が父親であった場合、経済的条件がさほど変わらなかったはずが、母親が子どもを引き取ることが増えたことによる、経済的な格差が顕著にあらわれているということですね。

『面会交流』への慎重な配慮

●梶井:
『子育ては夫婦が別れても両方で責任を持つべきだ』ということは当然です。
欧米では、共同親権が主流ですし、当然離婚をするときには、養育費の仕送りの額や面会交流についての契約をきちんと交わすことも義務づけられています。
日本は法律上単独親権ではありますが、離婚しても父と母が相応の責任を持つべき、ということは大切なことです。

●西川:
欧米と日本では法律上の親権の違いと、離婚後の子どもの養育について取り決めを行うしくみの違いといったところでしょうか。

●梶井:
面会交流そのものが問題だというのではなく、場合によっては面会交流が難しい事情もあるということです。
そのことへの配慮は非常に重要です。
『父親には面会させることができない』という深刻な困難さを抱えた、子どもを引き取った側の主張が取り上げられていないのではないかと危惧しています。

●西川:
去年も、一回目の面会交流で、父親が4歳の女の子と心中をした事件がありました。

●梶井:
離婚した夫婦の間でコミュニケーションが成立していないのに面会交流を強行することは、子どもにとっても酷な状況です。
婚姻中にDVがあった場合でも、離婚後の面会交流は難しい。
面会交流を推進していくなら、本当に慎重な配慮が必要です。
安全の保障がなければなりません。

●西川:
大変残念なことですが、たびたびニュースで聞く事件です。

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【取材してきました vol.017】札幌大谷大学・梶井祥子教授:第2回~配慮と寛容性が必要~」に続く…

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投稿:   更新:2018/02/16

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