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    【取材してきました vol.021】宮城県父子の会:第5回~行動に起こす当事者を増やしたい~

    投稿:   更新:2018/04/21

    カテゴリー:宮城県 仙台市 離婚・別居 地域別情報 特集記事

    精力的に活動を続けられている村上さんの原動力について聴かせていただきました。それはどうやら村上さんの育った環境にあるようです。どうぞご覧ください。

    ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

    今回お話をお伺いしたのは、宮城県在住のシングルファーザーで、全国父子家庭連絡協議会理事、宮城県父子の会代表の村上よしのぶさんです。(この記事は、5回に分けて掲載いたします。)

    ←【第1回~一人で子育てする困難さは父子家庭も同じ~】を読む
    ←【第2回~誰も訴えていないなら、じゃあやってやろうじゃないか~】を読む
    ←【第3回~被災地の経験を全国に生かしたい~】を読む
    ←【第4回~いかに私らしく生きるか~】を読む

    ***

    活動の根っこ

    ●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
    村上さんが最初にお感じだったように、誰かがやるだろうと思っていて結局誰もやらない。
    面倒なこと、実務をこなせる人がいままでいなかったから変わらなかった。
    その誰かに村上さんがなったわけですよね。
    ひとり親家庭という境遇にある方はたくさんいらっしゃいますけど、なにか不便だ、困ったな、不公平だなと思うことがあっても、それを変えようと行動する方はめったに居ません。
    村上さんご自身でそのようなパワーがあるのは、正義感の強さ、とかなにかお感じの事はありますか?

    ●宮城県父子の会代表・村上吉宣さん(以下、村上):
    僕の根っこはどこにあるのかなと、自分で理解していることがあります。
    実は、僕は小学校三年生までしか学校に行っていないんです。
    その後は中学、高校と不登校でした。
    当時、フリースクール、いまでいう子ども食堂や学習支援のような集まりに参加していました。
    そこでの友人は、ひとり親で貧困に苦しむ家庭で育っている子どもたちでした。
    中学校時代の遊び仲間でよく話していたことは「俺たちはくだらない大人にならないぞ」という事でした。
    選挙に行かないくせに政治に対する不満や愚痴ばっかりの大人たちを見ていて、おかしいことはおかしいとちゃんと言えないのはだめだなという感覚をもっていました。
    子どもの貧困問題、不登校、いじめ、発達障害、面会交流、親に会いたくても会えないなど、生きづらさを抱えている子どもたちを、自分も同じ子供の立場として見てきたわけですよ。
    その中で、気が付いたら大人になっちゃっている。
    なぜ、今、父子家庭支援の活動をしているのかと考えてみたときに、あの時に感じた、「くだらない大人になりたくない」という思いなんです。
    そんな姿を、子どもたちに絶対に見せたくないんです。
    あきらめなければ何とかなる、本気でやったら何とかなる、その頃からあるポリシーです。
    正しいという言葉は、イコール厳しいではだめだと思う。
    そこには優しいが付かないと、本当の意味での正しさではない。
    何らかの形でそれを示したかったし、その形が僕にとっては父子家庭支援だったのです。
    子どもの貧困対策センターに関わっているのも、同じ理由なんです。
    昔を思い出すと、子どもたちの声に大人たちは耳を傾けようとしていただろうかと。
    今はやっとそうしようとしているときです。
    あれから30年経ってしまいました。

    ●西川:
    そうですね、30年は長いようでアッという間です。

    ●村上:
    30年経ってしまったら自分は大人になってしまっている。
    そうしたら、やっぱり見過ごせないじゃないですか。
    これまでのいろいろな環境が僕を作っているし、こういう活動をするための原動力になっている。
    自然なことだし、趣味だと言いながら続けていけるんです。

    ●西川:
    やっぱり、たまたまそこにいたからというより、幼い時からの経験や思いが、現在の活動につながっているんですね。
    ひとり親当事者としての気持ちと、かつて、離婚家庭で育った子どもだったということもありますよね。

    ●村上:
    僕もね、親と会えない子どもの立場だったんですよ。
    幼少期からすごく父親に会いたくて、20歳で結婚してから初めて会いに行ったんですよ。
    そうしたら、父親から「まさか会いに来るとは思わなかった」と言われたんです。
    20歳の僕はまだ感覚が子どもだったんだと思うんですけど、ものすごく裏切られた気持ちになったんです。
    「俺の存在を無視して今まで生きてきたのか」と。
    理想化していたんだと思うんです、父親として。
    今だからこそ、父親としてとか男として恥ずかしくないように、という感覚がべっとりと沁みついている感覚がありますね、呪いみたいに。
    今でも恨んでいるし、近いうちに生前贈与の訴えをおこしてやろうかなんて思っているぐらいなんですけど、子どもだからこそそう思っちゃうんですよね。
    僕の知人の母子家庭で面会交流がうまくいっている家庭では、子どもたちに離婚の話をするときには『パパとママは夫婦としてはうまくいかなかったけど、あなたたちのパパとママであることは、絶対に変わらないからね』と伝えて、それを絶対に守っているんです。
    すごいことだなと思ったんですよ。
    そういう大人がいるんだなと。そういう別れ方、関係の仕方があるんだという事がものすごくショッキングで、それが当たり前の世の中にしたいんですよ。
    そのためには、男性、女性それぞれの生きづらさなど、お互いに抱えている悩みが違う事を理解できる社会的風土と、各個人の成熟度を上げていくことが求められていて、そこを目指していかないと、離婚はなくならないし、そこで辛い思いをする子どもを増やしたくないんです。
    子どもたちの世代で間に合わなくても、孫の代には、『どこにいてもパパとママであることに変わりはない』という感覚が当たり前の世の中になるように、今、僕が何ができるのかを考えて、父子家庭支援やファザーリングジャパンの活動、子どもの貧困問題対策に関わっているんです。
    ああ、しゃべってみると、相当僕の生き方は偏っていますね。

    行動に起こす当事者を増やしたい

    ●西川:
    何かを成し遂げたり変えていく使命のある方が、目標に向かって傾倒し没頭しないと、社会に対して爪痕を残したり、突破口を空けたりできないと思うんです。
    誰しも、「何かおかしい、不平等だ、困っているのに助けてもらえない」という漠然とした不満を感じていたとしても、その制度の中で不満を持ちながら暮らしていくしかない人がほとんどです。
    そのベールのように社会を包んでいる制度に対して、中からグサッと信念を突き刺して、バサッと穴をあけることができたのは、誰でもない、村上さんだからできたことだったんじゃないかって、お話を聞かせていただいて思いましたよ。

    ●村上:
    僕もね、やらなかったら変わらなかったと思う。
    特に、熊本の震災後に父子家庭への支援が明らかに以前と比べて良くなっていたことは、本当にやってよかったなと思った。
    自分のため、自分の子どもたちのため、というエゴの塊で活動をしていたんですが、結果的に必要としている方の役に立ったのなら、いろんな苦労も報われますね。

    ●西川:
    まさに村上さんは、『父子家庭支援の権化』ですね。
    問題意識を持っていてもどう行動に起こしたらいいかわからない当事者や支援者も多いと思いますし、村上さんのような先駆者がいらっしゃることで、自分にも何かできるのではと地域で活動をしてくれるかもしれませんし、そこまでいかなくても、どこかで誰かがこれを変えてくれたんだなと感謝してくれるかもしれません。
    ぜひ、続けて頂きたいです。

    ●村上:
    ずっとやるのかというと断言はできなくて、もしかしたら他の遊びの趣味を見つけてしまって、そっちにはまったら急に辞める可能性もありますよ。
    そんな時が来たら、次にこの問題を担う人に引き継いでいきたいと思っています。

    ●西川:
    そうですね、一生やらなきゃならないと縛られているよりも、いつでも手放せるんだと思っている方が、心理的に負担が少ないですよね。
    あわせて、次世代を担う後継者も育てていくのは大事ですよね。

    ●村上:
    えぞ父子ネットの上田さんのように、地域のコミュニティを重視する活動をされている方も全国にいいキャラクターが揃い始めているので、その土地ならではの支援活動と、国へ制度改革を提言していく活動と両輪が必要ですから、それぞれが出来ることを地道にやっていくしかないと思います。
    そのうち、ネットワークに参加している全国の支援者の活動を書類にまとめて、厚労省に持って行って父子家庭支援活動が全国展開できるようにしていけるようにしたいです。
    お互いにやっていることを斜めに見ながら自分の立ち位置で、何かできることを行動に起こしていく当事者を増やしていくことが大事だと考えています。

    ●西川:
    ありがとうございます。
    村上さんのこれまでのご功績、活動の今後や、次世代まで見据えた展望をお聞かせいただき、とても感動しました。
    最後に、息子さんの体調は現在はいかがでしょうか?

    ●村上:
    白血病については、幼い時の抗癌剤投与の影響が成長発達に影響しているので、月に一度の健診で様子を見ながらの生活は続いています。
    そして、発達障害の診断を受けて投薬治療もしています。
    僕も、職場で障がい者の就労支援の仕事をしていく中で、自分も、もしかしたらそうかなと感じて検査をしたら、どんぴしゃでした。
    今は自分も発達障害とうつ病の治療をするための障がい者手帳を申請中です。
    他人から見たら、離婚、自殺未遂、自己破産、生活保護、子どもの病気と障がい、自分も障がい者手帳と、一見惨々たるものかもしれないんですが、全部自分のブランドだと思っているので、当事者の痛みがわかる社会の役に立つ生き方ができるんだな、と思っています。

    ●西川:
    息子さんの容態を心配しながらの生活の中で、仕事柄、ご自身の気づきもあったのですね。
    うちも発達障害の診断が出ている子がいます。
    発達がアンバランスでも、すごく得意な分野がある人も多いですから、過去に歴史を動かすような偉人は皆、発達障害だったなんて話もあります。
    きっと村上さんだからできたことが多いので、ぜひ、いつ辞めてもいいというスタンスでいながら、ずっと続けてください。
    今日は深夜までお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。

    編集後記

    全国の父子家庭支援者から「政策提言活動といえばこの人」と尊敬を集めている村上さん。
    実際にお話をお伺いすると、ご自身の過去の活動に対しての手ごたえは確実に持ちつつ、しかしそれにおごることなく、次の解決すべき課題に向かって尽力されている様子が感じられました。

    想像してみて下さい。

    ご自身のお子さんが命にかかわるような病気になり、24時間付きっきりで看病しなければならなくなったとしたら。
    男性なんだから、働けば何とかなるでしょと、必要な支援が受けられないとしたら。

    ほとんどの方は、今ある制度という縛りの中で、なんとか工面して暮らしていく方法を選ぶでしょう。

    そこに何らかの問題意識を持ち、国に働きかけて制度を変えていくことが出来る人がどれだけいるでしょうか。
    行政の担当者、政治家以外で、当事者としての切迫した必要性と、これから同じ境遇になるだろう父子家庭のために、ここまで身を粉にして活動できる方はほかにいないかもしれません。

    村上さん自身も離婚家庭で育った子どもで、幼い時から生きづらさを抱えて暮らしてこられたことは、個人レベルで解決すべき課題というだけではなく、社会全体の男女平等参画、子どもの貧困対策、男性学へとつながるステップでした。

    現在も、金銭的負担が少ない、医療費助成の現物支給の実現に向けて精力的に活動をされています。
    国の制度は、網目の細かくあらゆる人のニーズに合わせて対応できるものであるべきですが、当事者だけが、その網目からわずかにこぼれ出る隙間で苦しむ人がいることを感じることが出来ます。
    そこで声を上げていかなくては、同じ境遇の人はなくなりません。

    様々な困難を乗り越えて、自分探しの旅をされる過程で、社会を変えるまでのムーブメントを起こされてきた村上さん。
    道を切り開くためには、ともに活動する同士と、社会が動くタイミングをとらえる力があってこそ、だったのではないかと思いますが、一度先駆者が作った道を、後を続く者が進むことは可能です。

    これからの、ひとり親支援がより充実し、そこで育つ子どもたちの未来が明るいものであるために、貢献されてきた方がいることを忘れないようにしたいと思いました。(ウタリくらぶ記者・西川明子

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    <村上よしのぶさんプロフィール>

    宮城県仙台市在住、高校1年生の男子、中学3年生の女子の父親(2018年3月現在)。
    全国父子家庭連絡会理事、宮城県父子の会代表。
    離婚直後に病気で倒れた祖父の介護、幼子二人の育児のダブルケアが始まる。
    祖父の他界後、長男の病気のため長期入院生活を余儀なくされ、八戸市から仙台市に転居。生活保護を受けながら看病した。
    父子家庭に児童扶養手当支給を求める政策提言、東日本大震災で妻を亡くした父子家庭の支援に当たり、夫に遺族基礎年金支給を求める政策提言し、支給の実現をした。
    現在は母子父子医療費助成の現物給付を求める活動をしている。

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