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【取材してきました vol.021】宮城県父子の会:第4回~いかに私らしく生きるか~

投稿:   更新:2018/03/31

カテゴリー:宮城県 仙台市 離婚・別居 地域別情報 特集記事

実現したらいいよねと誰もが聞いて同意をしてもらえるような要望をしてきた村上さんの今後の展望などについてお聞きしました。どうぞご覧ください。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

今回お話をお伺いしたのは、宮城県在住のシングルファーザーで、全国父子家庭連絡協議会理事、宮城県父子の会代表の村上よしのぶさんです。(この記事は、5回に分けて掲載いたします。)

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←【第2回~誰も訴えていないなら、じゃあやってやろうじゃないか~】を読む
←【第3回~被災地の経験を全国に生かしたい~】を読む

第5回~行動に起こす当事者を増やしたい~】を読む→

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今後の活動の展望

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
すでに児童扶養手当、遺族年金の父子家庭への支給を、という国の制度に働きかけて、それを実現させたという大きなご功績がありますが、今後の新たな活動の展開などありましたら、お聞かせいただけますか?

●宮城県父子の会代表・村上吉宣さん(以下、村上):
僕が所属しているNPO法人ファザーリングジャパンの元代表の吉田さんが、シングルファーザーの人生に焦点を当てて、その中で、父子支援活動をしている父親を紹介するネット記事を書いているんです。
その記事を集めて将来的に出版したいという話があります。
今は2つ記事が公開されていて、「NPO法人京都いえのこと勉強会」の木本さん、浜松市の「NPO法人サステナブルネット」の渡邊さんの紹介記事です。

[リンク]シングルファーザーを生きる~告知から2週間で旅立った妻
[リンク]シングルファーザーを生きる~子ども食堂を立ち上げた思い~

●西川:
それは楽しみですね。
社会的活動をしている方の素顔というか、ヒューマンストーリーは、当事者の声でもあり社会的問題点を解消するための父子活動支援推進に、各地にいろんな取り組みをしているシングルファーザーさんがいることを、多くの方にご理解いただくきっかけになりそうですね。

●村上:
いまのところ父子家庭支援の活動をしている方のストーリーですが、活動の事だけでなく、父子家庭になるまでの話や、子育てや家事、仕事で悩み苦しんでいる様子も描かれていますので、わりとドロドロぐちゃぐちゃしたストーリーになっています。
だからこそ、当事者に共感してもらえるでしょうし、読者に父子家庭の現実を知ってもらう機会になると思います。

●西川:
なるほど、どんな優秀なフィクションよりもリアリティ溢れる読者に訴えかけるインタビュー記事が一番説得力ありますよね。
そういえば、ちょっと切り口は違いますけど、子どもと会えなくなってしまったお父さんたちの話の本を読んだことがあります。
妻が子どもを連れて家を出た夫の辛い現実が書かれていました。

●村上:
結構よく聞く話なんです。
嫁の方が借金を作って出ていったという話も多いんです。
また身に覚えのないDVを理由に離婚に至る人も多いです。
僕は子どもに会えない親の会にも参加するんですけど、意見が合わなくてけんかして帰ってくることもあります。
一番のポイントは、お互い他人になったんだぜ、っていうところなんですよ。
女性よりも男性の方が、まだ別れた後もまだ妻扱いしているんです。
離婚したんだからもう他人でしょう? もう彼氏でも夫でもないただの人なんです。
他人なんだというところから関係を作っていかなきゃならないんだよ、という話をいつもしてきます。
子どもたちにとってはパパ、ママであることは離れていても同じだけど、他人としてのパートナーシップをいかに作っていくかを考えると、面会交流という言葉を使わずに関係を創れている人も多いのです。
そういった環境が作れないということは、そういう別れ方をしたからであって、そういう背景のある二人が子どものために会話ができる関係までに回復するプロセスは、ものすごく遠いところから関係を作り直さなくてはならない。
信頼関係がマイナスから出発して、いかにゼロに戻すかという関係づくりをしていくんだという感覚をもって活動している方と、子どもに会えないという、恨み辛みしかない会もあるし、認識のギャップがあるんですよね。

●西川:
そうですね。
これまで多くのシングルマザーさんにお話をお伺いしてきましたが、面会交流という決まり事を作らずに、気軽に子どもたちが「今日もパパんち行ってくる」と行き来できる関係性があれば、離婚をしていてもうまく他人でありつつ、子どもの両親としてのパートナーシップの絆を保っていると感じています。
片や、様々な事情があって、子どもを元パートナーに会わせない方もいました。

●村上:
親と会うことは子どもの権利ですが、その環境を作るのは離婚した後の他人になったパパとママの二人なんです。
そうなったときに、どれだけ人として成熟しているかによって子どもの権利が尊重されるかが左右されます。
大人の主張、感情のみが先行して、子どもの権利をそのための道具として使っていることもあります。
日本では、まだ子どもの権利を守るという考えで話を進めていく軸ができていないのです。

●西川:
欧米のように、男女平等や子どもの権利についての社会的環境を整備するにはまだまだ時間がかかりそうです。

●村上:
ですから、僕のしていることは、自分のためだし、子どもたちのためなんですね。
政策提言や法改正についての活動は、それが実現することでどこかの誰かが楽になること、未来の子どもたちや孫たち、友達かもしれない。
身近な人のためになることは、みんなのためにもなります。
生活の負担にたまになりますけど、ものすごく情熱を傾けられる趣味というか、大人の言葉でいうと社会貢献活動ですが、実現したらいいよねと誰もが聞いて同意をしてもらえるような要望しかしていないんです。
ファザーリングジャパンでの活動は、労働条件の改善が主テーマであり、イクボスプロジェクトにも関わっているんですが、父子家庭にとって子育てしながら働きやすい社会になったら、母子家庭や障害を持っている方にとっても働きやすい社会になると思っていて、父子家庭だから困っているんです、という立場からだけの発信だけでは足りなくて、一般のお父さんたちの立ち位置からのアプローチも必要です。

●西川:
政策提言をして、実際に支援の拡充を実現されたというご功績がある中、それを趣味といってのける村上さんはすばらしいですね。
身近な人を幸せにするための活動は、結果的に皆のためになりますものね。

●村上:
その他に現在取り組んでいる活動としては、遺族基礎年金の対象にならない人の救済を求めるための署名活動と、ひとり親世帯への医療費助成を還付型から現物支給型にするための要望をしていくことです。
医療費助成には、還付型か現物支給型かという方法がありますが、還付型はいったん病院の窓口で支払いをする。
現物支給型は窓口での負担が少ないという方法です。

[リンク]遺族基礎年金の対象外である父子家庭に救いの手を差し伸べたい!(Ready For)
[リンク]47都道府県の母子父子医療費助成の運用の仕方について (全国父子家庭支援ネットワーク 代表理事\宮城県父子の会 代表Yahoo!ブログ)

いかに私らしく生きるか

●西川:
引き続き政策提言の活動も精力的にされているのですね。

●村上:
その先には、先ほど言ったように、いかに「わたしらしく生きるか」につながるんです。
ひとり親家庭支援の仕組みは、母子寡婦福祉法から始まり、男女共同参画を通って労働局に行きます。
いかに自分らしく生きるかという事を学びなおしをして、社会で働く人材となるかにつながっていくのですが、その男性バージョンがないんです。
男性学という男性の生きづらさを学ぶ学問があるのですが、旧来、男は仕事が出来てなんぼから脱却できずに苦しんでいる男性たちや、仕事をしているんだから家事育児が出来なくても仕方がないよね、という言い訳をしている男性たちもいっぱいいるんだけど、両方とも男性たちのフィールドであって、どっちかだけではない。
父子家庭支援活動から、男性としての生きやすさにつながるように最終的には目指していけるといいかなとぼんやりとした展望は持っているんです。

[PDF]母子及び寡婦福祉法の改正等について~ひとり親家庭の支援~(厚生労働省)

●西川:
父子家庭へのひとり親支援策の拡充だけではなく、最終的には男性の生きづらさを解消できる社会づくりを目指しておられるんですね。
実際に、国に働きかけて制度の改正を実現されたご功績がある中、それを趣味だ、たまたまここに住んでいたからできたんだとおっしゃっているのはご謙遜だと思いますが、おじいさんと息子さんの看病を同時に担ったダブルケアの経験者であるということをきっかけに、父子家庭にも母子家庭支援制度が使えるように拡充すること、被災地で妻を亡くした遺族の声を聴き、それを政府に届けることは、その環境にいたとしても誰もが行動ができるわけではないので、やはり村上さんに使命があったのではないかなと感じています。

●村上:
東日本大震災の渦中にいたときには、僕もこれは使命だなと思っちゃったこともありました。
あの時に、被災地に足を運んでくれた「あしなが育英会」をはじめとして支援に当たる団体に、「父子家庭支援も大事だよね」と感じてもらったことは大きかったし、あの時は趣味どころかこれを実現しなかったら申し訳ないという勝手な責任感を感じて活動をしていましたね、ただの趣味なのに。
たまたま、自分がこれをやらなくてはという事に出会うことは特別だと思うんです。
やっていてしんどいことは多いけど、手放しがたい。
そういえば小学校のころ学級会で、学芸会の出し物を何にするといったいろんな意見を出しながら方針って決まるじゃないですか。
大概の子は誰かがしゃべるのを待っているけど、その時にぼくは最初にしゃべるタイプだった。

●西川:
先陣を切る、ですね。
何かを成し遂げる時には、最初に言い出す人がいないと何も始まりませんよね。

●村上:
ただそれだけだと思うんです。
友達が僕のことを紹介するときに「すごいことをやっている人なんだよ」と紹介されるのはすごく嫌いなんですよ。
あくまでも趣味で勝手にやっていることだし。
器用じゃないし社交的じゃないですが、スイッチが入ると無視が出来ない。
法的な課題や社会問題が、身近に苦しさを訴えている人がいたら、自分が解決するための道筋を知っていたら、無視するのが罪だと思う。

●西川:
その感覚、すごく共感しますね。
わたしもライフワークとしてやっている子育て支援活動がまさにそんな感じです。
自分が困っていた時に専門家や先輩ママさんが、情報をくれたり、励ましてくれたことがすごく助けになって、今がある。
自分はその時の先輩ママさんの立場に今あるんだから、知っていることは必要としている人に伝えたいと、使命感を持ってやっています。

●村上:
スイッチ入る時ってありますよね? そのまんまの感覚だと思います。
僕はそれが少し強いかもしれない。
政策提言にはいろいろと折衝、合意形成、資料づくり、統計をとったり、アンケートをとったりと面倒なこともあるんですけど、そういうところにスイッチがあるんだからしょうがないです。

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<村上よしのぶさんプロフィール>

宮城県仙台市在住、高校1年生の男子、中学3年生の女子の父親(2018年3月現在)。
全国父子家庭連絡会理事、宮城県父子の会代表。
離婚直後に病気で倒れた祖父の介護、幼子二人の育児のダブルケアが始まる。
祖父の他界後、長男の病気のため長期入院生活を余儀なくされ、八戸市から仙台市に転居。生活保護を受けながら看病した。
父子家庭に児童扶養手当支給を求める政策提言、東日本大震災で妻を亡くした父子家庭の支援に当たり、夫に遺族基礎年金支給を求める政策提言し、支給の実現をした。
現在は母子父子医療費助成の現物給付を求める活動をしている。

【参考リンク】

【関連動画】

※ 現在進行中、クラウドファウンディングの取り組み

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投稿:   更新:2018/03/31

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