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【取材してきました vol.016】日本離婚の子ども協会:第2回~被害者意識を手放すことが必要~

投稿:   更新:2018/01/27

カテゴリー:横浜市 離婚・別居 家族関係 神奈川県 地域別情報 特集記事

子どもは親の背をみて育つと言います。日本離婚の子ども協会さんの中田さんと平賀さんが経験してきたことから紡ぎ出される言葉をどうぞご一読ください。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。
ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

今回は、東京を中心に活動をしている方のもとへ、北海道から上京してお話を直接お伺いしました。
上京したとき、どうしてもお会いしたかった方々は、以前取材した「コトオヤネットさっぽろ」「親子ネットさっぽろ」両団体が昨年11月に主催した「面会交流学習会」に、講師として来道された「日本離婚の子ども協会」の元代表・中田和夫さんと、現代表の平賀信吾さんです。(この記事は、3回に分けて掲載いたします。)

←【第1回~1年越しの取材、子どもの立場から~】を読む

第3回~新・プロジェクト 自立した大人に成るための方法~】を読む→

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親の生き方と自分自身の生き方の葛藤

●日本離婚の子ども協会前代表・中田和夫さん(以下、中田):
去年、講演会でわたしは自分のことって話していましたっけ?

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
はい、お母さんは亡くなっていると聞かされていたのに、高校生の時に実は生きているということを知って、その後探して実際に会いに行ったとおっしゃってました。

●中田:
もう一つ、社会人一年目で会社を辞めてしまってうつになってしまったんです。
うつから回復したいというのがこういった活動をする主な動機だったんですけど、平賀君もひどくはないけど同じような経験があってね。
うちの団体の対象者は成人の方なので、病気になったり、問題を起こすのは全体からすると少数派で、かなりの人はごく普通に生きて暮らしているんですけど、もやもやした思いや、葛藤を抱えていることが多いんです。
そういうことが共通に会って、表面上は普通の社会人や、お母さんをやっているけど、既に大人になっている人が今まで自分で抱えてきたことを何とかしようということが目的です。
「子ども」とはいっても文字通りの子どもではなくて、大人になってもこういう話をしてもいいんだよ、同じ境遇で集まっている人がいるんだよ、自分がこういう気持ちを抱えてもいいんだなと思える場にしたいのです。

●西川:
文字通りの子どもたちを対象にした支援策は、学習支援や居場所づくりなど、形的には増えてきていますよね。
ただ、メンタルを支えるといった部分ではまだまだかなと感じています。
実は、今回上京した際の滞在先は埼玉在住のシングルマザーでもある妹の家なんです。
小学四年生の甥っ子が一人いるのですが、なにしろ札幌と関東ですから年に数回しか甥っ子とは会わなくて、会ったとしても久しぶりに再会したいとこ同士がうわーっと遊んでいますから、わたしが甥っ子と話す機会なんてほとんどなかったんですね。
今回、結構甥っ子に吃音があることに気が付いたんです。
妹も気にしていて、今日もボイストレーナーのところに行かせて話し方の訓練をするとのことでした。
もしかしたら吃音については心理的な抑圧が原因かもしれませんし、詳しくはわかりませんが、離婚家庭で育つ子どもへの支援はまだまだ足りないのかもしれません。
そういった少年時代を過ごした大人になっている皆さんにとっては、なおさら支援の場が少ないですよね。

●中田:
「大人になったんだからもういいでしょう」ではなく、そういったことを話せる場を提供しましょうということなんです。

●日本離婚の子ども協会現代表・平賀信吾さん(以下、平賀):
おっしゃるとおりでして、目で見える子どもへの支援というものは、物やお金、学習の支援とか、これらを与えておけば少なくとも「“普通の家庭”と同じようにはなれる」ということが中心になっているのではないかと感じております。
心のことは、本当はどんな家庭であっても当てはまることであり、その子自身がどういう成長を遂げて大人になるかについては、もっと個人に対して深い関わりをしなくては分かり合えないのではないかと思っております。
大人の成り方を、親から教わることが出来なかったというか、大人として参考にすることが難しかった人たちのモデルに慣れてしまったために「新しい大人像」を作っていく必要があるという意味では、どんな家庭であっても皆共通しているのではないかと感じます。

●西川:
よく「尊敬している人は誰ですか」と聞かれたときに、お父さんやお母さん、と素直に言える子がうらやましかったです。
尊敬できる大人が身近に居たなら、ああいう大人になりたいと人生設計ができますよね。

●平賀:
尊敬できる親ならそういう性格を目指したり、そういう生き方をしてみたいということで、将来についてだったり人間関係の作り方を学べると思います。
しかし自分がこれまで出会ってきた同じ経験をしている方々からは、親のようになってはいけない、という思いで、どうにか違う生き方を探そうと葛藤している人の方が多い印象です。
その葛藤は今までだと一人でどうにかしなくてはなりませんでした。
確かに、自己責任の名のもとにどうにか頑張ってやってこれたり、過去の苦しみは残っていたとしてもなんとか折り合いをつけている人もいらっしゃいます。
でもそれが未だ解消できずに、なにかのきっかけで病気になってしまったり、弱っている時は頼りやすいものに依存してしまう傾向があると感じているので、お酒などの飲み過ぎで依存症になってしまう人もいるのではないでしょうか。
僕はお酒が飲めない体質ですが、皮肉なことにそれが結果的には依存をしなくて済んだのかもしれないと感じています。

子どもの視点、親の争いには……

●西川:
「離婚で壊れる子どもたち」という本がありますよね。

[リンク]光文社「離婚で壊れる子どもたち」心理臨床家からの警告 棚瀬一代/著

●中田:
著者とは講演会で1、2回お会いしました。
タイトルもご本人の本意じゃないと思うんだけど。

●平賀:
実際には、個々人が抱えている思いや感じているものがそれぞれ違うので、全員が傷ついたり大変だったりしてきたわけではないと思います。
ただ、その中で同じ経験者同士ある程度気持ちを共有できる部分があったり、また個別に解決していくしかない部分があったりするのではないかと思います。
一概に答えがこうですよと言えるわけではないのではと感じています。

●西川:
もちろん離婚するにはそれなりの理由があるんだろうし、命に係わるなどやむを得なかった場合もありますからね。

●平賀:
経験は人それぞれですが、その時々で感じた感情については割と共感できるのではと思うんです。
親のために我慢したとか、親のために努力したとか、悲しい思いをしたとか、いらいらしたとか、ネガティブな感情に関してそれぞれ感じている部分があるんです。
そういう人たちの話を聞いて、似たような感情を覚えたと共有できる場所として活動をやっている感じです。

●西川:
ネガティブな感情に捉われると罪悪感を感じてしまうかもしれませんが、わたしだけじゃなかったんだと悩みを共有できる仲間がいるだけでも、ずいぶん違いますよね。
わたしが「離婚で壊れる子どもたち」の本を買いました、という通知が読書メーターのSNS連動で拡散されたのですが、その時にフェイスブックにママ友さんから「わたしは5歳の時にお父さんがでていって壊れました」とコメントをつけてきました。他にも数名同じような方がいましてね。
壊れた、というフレーズで離婚家庭の子どもであった自分をカテゴライズ化するんだなと。
お父さんとお母さんがいて自分がいるという状態を、生物的家族とするならば、もしどちらかがいなくなったときに、家族としての形が「壊れてしまった」感覚があるのかなと思いました。
去年中田さんと初めてお会いしたのは、札幌での「面会交流」についての学習会で、主催者の方たちは、お子さんと会うことが出来なくなった親でした。
今年になって彼らに取材させていただいたのですが、思ったより反響がありまして、同じ立場の方からは「よくぞ自分たちについて取り上げてくれた。ありがとう」といったメールが来ましたし、
母子支援団体の方からは、「とても辛くて読めなかった。この問題について研究している大学の先生や、DV被害者を保護している施設もあるからそちらの話も聞きなさい」と言われました。

●平賀:
正直な話、僕自身は親同士がどれだけ争っても興味がありません。
完全に個人対個人の問題だし、無理やり巻き込ませるのは止めて欲しいって思ってしまうので、個人同士で速やかに解決してほしいです。
緩やかな解決のための方法を目指していただきたいというのが自分の気持ちかなと思います。

●西川:
独立した人として解決してほしい。

被害者意識を手放すことが必要

●平賀:
子どもを、きちんと一人の人格を持った人として尊重して「あなたならどう思う?」と話を聞いてもらい、お互いの意見を合わせながら解決していくのが理想の着地の仕方だと考えます。
それぞれの立場や役割で争うというのは空しいというか、そこにだけ向き合っている場合だと、いつまでたっても子どもの気持ちを理解したいといっても子どもが本当に願っていることを知ることはできないんじゃないかなと感じます。
これは子どもとしての意見というより、個人の意見ではありますが。

●西川:
子ども自身の問題ではなくて、男女の個人個人の問題ですよね。

●平賀:
団体の方にも別居親の方からメールで「子どもの気持ちが知りたいので小冊子がほしい」という連絡が来ることがあります。
この冊子を読んだ上でどういうアクションを起こしているかは把握しきれていないのですが、そのような悩みを持つのなら、まず徹底的に相手を理解するんだという真摯な気持ちでやらないと、どんな人に対しても心から理解するのは難しいんじゃないかと思います。

●中田:
この会を立ち上げる時に、平賀君と二人で話し合って決めたことは、自分の問題を解決することがメインの目的でなので、面会交流や法制度についてなどを、いいとか悪いとかをいうのはやめようと。
私が新聞の取材を受けた15年前にも、記者さんが言っていました。
片方の親の立場について取り上げた記事を書いたら、他方からそれはひどいとクレームが来たりします。
どっちがひどいとかではなくて、子どもの視点からの記事を書きたいと。

●西川:
あくまで協会としては中立的な立場をとるということですかね。

●中田:
被害者意識を手放すことが必要なんじゃないかなと思います。
ひとのせいではなく、何とかして自分の力で乗り越えるということが出来ないかという気持ちでグループを立ち上げたんです。
いくつになったとしても必要な時期があるんです。
ミーティングでも、わたしが取材協力をした朝日新聞を見て切り抜いていた60代の方でこれまでお子さんを2人育てた方が、親御さんに会いに行ったと聞きました。
その方にとっては、今がその時だったんです。
ですから、20歳を超えたから、親になったからと年齢やライフステージが解決するのではない。
いくつになっても、離婚の子どもであったことを語れる場を用意したいのです。

[リンク]親子断絶防止法全国連絡会(平成28年10月17日朝日新聞)
[リンク]親の離婚、今も葛藤 辺見えみりさん「欠けた自分…」(朝日新聞デジタル)
[リンク]親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(平成22年3月15日日経新聞夕刊)

●平賀:
被害者意識を手放すためにも、自分たちがまず前に進もうと感じました。
かつて離婚家庭の子どもとして育ち、現時点で大人になった方は強い自己責任の中一人で生きておりますが、そう言った立場の人を対象に支援している人を他に聞いたことはありません。
子どもから大人になり、そして親になるというプロセスは、心が成熟している人に関してはすんなり達成できることかもしれませんが、うまく自立できなかった人は、達成のために、生きづらさを引きずったまますごく努力してぎりぎりまで頑張っているのではないかと考えます。
これらの無理は、ふとしたきっかけでうつ病やひきこもり・ニートになってしまうような要因に多かれ少なかれ含まれているんじゃないかなと思っているので、我々と一緒に話でもしながら、自分自身に合った「大人になる」やり方を一緒に考えていただけたらと感じております。

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【取材してきました vol.016】日本離婚の子ども協会:第3回~新・プロジェクト 自立した大人に成るための方法~

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日本離婚の子ども協会 プロフィール>

2016年4月団体設立。
2006年2月開設mixi「親の離婚を経験した子ども」内でのコミュニケーションやオフ会を通じて当事者同士の交流を図ってきた。
インタビュー集「体験集」を発行。
インターネット上のみならず、当事者がつながる場所を作ろうと、団体設立に至る。
不定期に東京都内に集まり、ミーティングを開催。海外の文献を自主翻訳したテキストの読書会などの活動を行っている。

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【取材してきました vol.016】日本離婚の子ども協会:第1回~1年越しの取材、子どもの立場から~

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投稿:   更新:2018/01/27

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