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【取材してきました vol.010】コトオヤネットさっぽろ・親子ネットさっぽろ:第6回~会えなかった時間は取り戻せない、絆の土台~

投稿:   更新:2017/08/16

カテゴリー:北海道 札幌市 離婚・別居 地域別情報 特集記事

『もうひとりの親』への取材記事も最終回となりました。読者の皆様は何を感じられるでしょうか?『離婚』ということについて、多面的に理解するには『もうひとりの親』への理解も必要不可欠です。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方について、支援者においては活動内容について生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ記者・西川明子です。

これまで、主に「ひとり親当事者」または「ひとり親支援」に関わるサービスについて、ご紹介をしてきました。
今回、お話をお伺いしたのは、『もうひとりの親』の当事者がつくる支援団体です。
コトオヤネットさっぽろ」のカタラン菊之進さん親子ネットさっぽろ」の佐々木泰子さんにお話をお伺いしました。

離婚をした両親のうち、子どもと一緒に暮らしている「ひとり親」のイメージが強いですが、子どもと一緒に暮らしていない『もうひとりの親』が存在します。
その中でも、自由に子どもに会うことができなくなった『子どもと引き離された親』『親と引き離された子どもたち』がいることを知りました。
離婚をしたとはいえ、子どもたちの実の親なのに、どうして「引き離される」ことになってしまうのでしょうか?(この記事は6回に分けて掲載いたします。)

←【第1回~子どもに会えない『もうひとりの親』の声~】を読む
←【第2回~離婚後の子育てについての社会的コンセンサス、その課題~】を読む
←【第3回~先に連れ去った方が勝ちになってしまっているシステム~】を読む
←【第4回~平等ではない裁判、多くの親が諦めるしかなくなっていく現実~】を読む
←【第5回~養育費の使い道、『もうひとりの親』は無権利状態~】を読む

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空白の時間は、取り戻せない

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
これまで、離婚経験のある知人はたいてい子どもと一緒に暮らしている方で、現在の状況に満足されている方も多かったので、子どもと一緒に暮らしていない親、さらに自由に面会交流をすることすら難しくなっているというお話をお伺いして、衝撃を受けました。

●コトオヤネットさっぽろ・カタラン菊之進さん(以下、カタラン):
子どもが一緒にいたら、たとえ貧困だったとしても生きる希望があるじゃないですか。
別居親で面会もできなくて接点が遮断された状況だったら、いったい何を支えに生きていくのか、という根源的な問題があるんです。
物理的な貧困のレベルではない、精神が病んでいくんです。

●親子ネットさっぽろ・佐々木泰子さん(以下、佐々木):
弁護士や裁判所が言うんです。
今たとえ会えなかったとしても、将来大人になったら会えるかもしれない。
そうしたらまた親子の絆を取り戻せるでしょって。

●カタラン:
うちは中学2年から6年ぐらい会えなかったんだけど、その空白の時間は取り戻せないですもん。
20歳ぐらいになってから、連絡は取れたけど、一度たりとも「お父さん」と言わないし、丁寧語のまま、打ち解けた感じで話すことが出来ない。
失われた時間は、幼少期の親に依存し、甘えて助けが必要であったときのプロセスが抜け落ちていくと、取り戻せない。
よそよそしさがぬけないし。

●佐々木:
全く会えない状況から、「連絡取れた」「会えた」だから絆も取り戻したでしょっていう表面的な問題じゃないんです。
実際、発達段階の中での基本的信頼という土台がなければ、それ以上の関係性は、もろく、不安定なものとなってしまいます。

●西川:
親子としてのアタッチメントが失われてしまったのですね。

●カタラン:
空白の時間は埋めようがない。

●佐々木:
親子だったら当たり前にある、ケンカしたとか仲直りしたとか、フォローをしたとか、失敗をしたなどのやり取りがないから、信頼関係がない。
自分の親であるという存在は認めたけど、信頼関係はなかなか再構築できない。

●カタラン:
だから、大人になったら会いに来るといってパスしちゃダメ。
一番大事な時期に親と子が七転八倒できるような関係性を作れるような、社会的システムを作っていかないといけないんです。
もし、共同親権ができたとしても、どうやっても法律が介入できないこともあるので、そこからあぶれていく人たちがいるわけだから、大前提としての共同親権と、親支援プログラムは作っていく必要があるんです。

●西川:
前提自体を変えていく必要があるんですね。

●佐々木:
子どもの視点に立つと、両方とも親だし、祖父母だから、みんなの愛情を受ける権利がある。
半分から受けられなくなるということがおかしいんだという出発点です。
会わせる会わせないではなく、会わなくちゃならないから、じゃあどうする? と考えたい。
今はそこがない。
法として前提条件と必要な支援を作る。
海外の例を見ると、必ずしも親権を半分半分にしなくちゃならないわけではないんです。
個別の状況に合わせる必要があります。
例えば経済的なことは、同居親7対別居親3にする、とか……。

●カタラン:
原則50%で、ケースバイケースで司法が介入するように。

●西川:
法律をいっぺんに変えるということは難しいかもしれませんが、当事者が声を上げていかないとなかなか伝わっていかないでしょうし、子どもと一緒に暮らしていない親の当事者の声は特に伝わってなさそうですしね。
今回、少しのお時間でしたがお話を聞かせていただいて、どんなにお辛い思いをされているか、社会の制度を変えていく必要性が高いことを感じました。
貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。

編集後記

今回の特集記事は、「ひとり親」ではなく、「子どもと一緒に暮らしていない方の親」で、なおかつ、「子どもと自由に面会交流さえできなくなってしまった方」のお話をお伺いしました。
日本の現在の法律上、単独親権のため、親権はどちらか一方へ決めなくてはならず、同居親が親権をもち、別居親は「親」ではなくなるのです。

同居親が、子どもを養育するにあたって、大きな権利を持ち、子どもともうひとりの親との関係性までコントロールしてしまうことがあるのだと知り、大変残念に思いました。
別居親が子どもに自由に会うことが出来なくなる事例は、全体のうち少数ではあるかもしれませんが、血を分けた親子の交流が絶たれてしまうことは、子どもの健全な発達にも影響しますし、別居親の人生においても大きな打撃を与えます。
親の離婚による子どもへの影響が最小限になるように、国の制度としても海外の事例を参考にして改善してほしいものです。

ひとり親家庭で育った、スタッフの一人は、草稿を読んだ際、「もうひとりの親について、また、その気持ち、あまり考えたことがありませんでした。衝撃を受けました。思い至らなかった自分を反省しました。言葉も激しい、けれど、それだけ想いがあるということ。もうひとりの親について、存在が無視されているに等しい扱いだということ。」という感想をくれました。
自分が今、ここに生きているということは、親が二人いたからこそ
ひどい虐待をしていたなど、子どもの心身に甚大な悪影響を及ぼす親であったのなら、二度と合わせないという選択もしかたがないのかもしれません。
ご家庭ごとに事情が異なりますが、子どもの最善の利益を優先した生活が続くことを望みます。

取材当日、お二人のお話をお伺いした後、わたしは自分の子どもたちの待ち合わせ場所に向かいました。
もう約束の時間を過ぎているので、と慌ててその場を立ち去ってしまいました。
わたしは毎日当たり前のように子どもと暮らし、これからもそれはずっと続いていくだろうし、まして万が一ひとり親になるとしても、親権を持つのは母親の自分だと信じて疑っていませんでした。

しかし、母親である佐々木さんが、実際お子さんと会えていないのです。
もし、そのような立場になったとしたら、とても生きてはいけないような絶望が襲うと思います。

これから子どもと会うと告げていく私の姿を、お二人はどう思ってご覧になっていたんだろうと思うと、メールでお詫びをするしかありませんでした。

「わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち」という本を読みました。
その中には、突然子どもを連れて妻がいなくなった父親たちの孤独感や苦悩がたくさんつづられています。
そして、別れさせ屋のようなビジネスの存在も書いてありました。
この本を書いたのはご自身も当事者のノンフィクション作家です。
彼は、この本を書くときに、自分自身の経験した出来事とその辛さを思い出し、なかなか書き進められないこともあったそうです。

子どもと会えていないほうの親は、もしかしたら「子どもを捨てた」のではなく、「会いたくても会えなかった」のかもしれません。
昨年、面会交流学習会で講師をつとめられた方には、「離婚のこども」の支援活動をしている方もいました。
親目線での考え方、子ども目線での考え方があります。
それには、社会的制度の限界や未熟さが大いに関係しているのかもしれません。

いずれにしても当事者が声をあげ、国際的には取り組まれている事例があるのならば、ぜひ日本にも導入していただき、離婚が避けられなかったとしても、子どもがその中においても最善の環境で暮らすことが出来る、そんな世の中になることを望みます。

最後に、別れ際にお二人から「西川さん、離婚を考えているのなら、もう少しよく考えてからの方がいいですよ」と言われました。
お二人からの強いメッセージは、私を貫き、抜けそうもありません。

(ウタリくらぶ記者・西川明子

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離婚後の共同子育て社会の実現を目指して活動している当事者の市民団体です。
連絡先…電話 :011-863-1377

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2016年6月より「親子ネット」より支部認定を受け、札幌市を主に北海道内で活動を開始。
地方自治体への陳情活動の他、勉強会の開催、別居・離婚に伴う子供と会えない親の支援(情報提供、相談、ピアカウンセリング等)を行っている。

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