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    【取材してきました vol.024】亜璃西社:第1回~観察眼と探究心「離婚する女たち 北海道の女に見る別れとは」~

    投稿:   更新:2018/06/28

    カテゴリー:北海道 札幌市 離婚・別居 地域別情報 特集記事

    1冊の本に感銘を受けて取材を申し込んだところ、快く応じてくださいました。どうぞご覧ください。

    ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方について、支援者においては活動内容について生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

    ひとり親支援に携わって2年、多くのひとり親当事者、支援活動団体にお会いしてきました。

    取材を進める中で、よりひとり親支援に理解を深めるため、経験談や支援内容、社会情勢に関わる資料に触れてきました。

    その手段としては、ネット検索はもちろん、実際に図書館を利用して書籍を紐解いてみることもあります。
    蔵書検索システムでキーワードを入れると参考図書が出てきますし、電子図書館では、絶版になっている書籍も手軽に読むことが可能です。

    ある時、「離婚」のキーワードで資料検索をしたところ、私の住む北海道札幌市の出版社が平成初期に出版した書籍を見つけました。

    読んでみると、当事者の体験談と合わせて、時代背景とデータからみる分析、支援者側の視点も織り込まれており、しかも著者は、ひとり親当事者ではないという、客観的な視点と、女性としての共感的な表現が魅力的でした。

    このような取り組みは、北海道では、「ウタリくらぶ」が初めてだと思い込んでいたので、30年近く前にこの企画をされていた先見の明のある方に、ぜひお会いして取材秘話をお伺いしたいと取材を申し入れました。(この記事は2回にわたって連載します。)

    第2回~考察・あとがきと編集後記~】を読む→

    ***

    離婚する女たち 北海道の女に見る別れとは

    1992年10月15日発行 著者:我孫子晴美 出版元:亜璃西社
    単行本は現在絶版。
    電子書籍は、【HOOPAライブラリー】kindle版

    我孫子晴美さん プロフィール

    1954年北海道札幌市生まれ。
    札幌市立開成高校を経て、弘前大学人文学部卒業。札幌市内の中学校に5年間勤務の後、アルバイトをしながら創作活動を展開。
    文芸誌『小説 壹號』『小説 貮號』(共著)のほか、『北方文芸』『幽玄』『三月派』などに小説、評論等、多数の作品がある。2017年11月逝去。(引用:離婚する女たち 著者プロフィール)

    和田由美さん プロフィール

    北海道札幌市に本社を置く出版編集社「亜璃西社」を1988年に設立、代表取締役社長。
    1949年北海道小樽市生まれ。藤女子短期大学英文科卒業。
    タウン誌「ステージガイド札幌」編集長を経て、ベストセラー『さっぽろ青春街図』を編集者として世に送り出す。
    その傍ら、各紙誌に連載を持つエッセイストとしても活躍。
    著書に『北海道 究極の食材めぐり』(JTBパブリッシング)、『こだわりのロングセラー』(共同文化社)、『日曜日のカレー』『さっぽろ喫茶店グラフィティー』『さっぽろ酒場グラフィティー』(以上、亜璃西社)など。(引用:亜璃西社・「いつだってプカプカ」著者プロフィール

    [リンク]北海道Likers 情熱の仕事人。札幌の街を見続けて。エッセイスト「和田由美」

    取材依頼、著者には届かず。企画者はシングルマザー

    早速、取材申し入れのために、著者名でネット検索をすると、我孫子晴美さんのフェイスブックを見つけました。
    ご著書を大変興味深く読ませていただいたこと、ひとり親支援についての取材記事を書いており、是非執筆当時のお話をお伺いしたいと取材依頼をメッセージでお送りしました。

    しかし、数日たってもお返事がなかったので、もしかすると著者さんは、あまりフェイスブックをご覧になっていないのではと、出版社のフェイスブックページから著者さんに連絡を取りたいと依頼しました。
    即日、出版担当の方からお返事をいただいたのですが、そのお返事は想定外のものでした。

    『お問い合わせをいただき、ありがとうございます。せっかくご連絡いただいたのですが、我孫子さんは既に亡くなられております。企画したのは、自らもシングルマザーである小社代表の和田となります。』

    お会いしたい方は既にこの世にいらっしゃらない。
    軽くショックを受けました。

    しかし、取材時のご苦労などをぜひお伺いしたかったので、著者さんご本人にお会いできないのは大変残念でしたが、お返事を下さった出版担当さんに、ぜひ代表の和田さんにお会いしたいと打診させていただいたところ、ご快諾いただきました。

    地元密着の出版社、創業当時から北海道の女性と離婚について注目

    株式会社 亜璃西社は、北海道札幌市中心部の大通駅の近くにあります。

    1988年に編集プロダクションを母体に北海道に根差した出版を手掛け、自然・生活・レジャーをテーマに幅広いジャンルの出版物を刊行し、新聞や雑誌に取材・執筆も担当しているとのこと。
    代表の和田さんは地元ローカルの情報番組にコメンテーターとして出演もされています。

    お仕事の最中、事務所にお招きいただきました。

    ***

    ●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
    本日はご多忙中、急にお時間を割いていただきありがとうございました。出版担当さんにメッセージでご連絡をさせていただきましたのは、ひとり親支援サイトの取材記事を担当しており、御社が平成初期に出版されていた「離婚する女たち」を拝読してぜひ著者の、我孫子晴美さんへお話をお伺いしたいと考えたからです。
    その際、既に我孫子さんはお亡くなりになっておられること、書籍の企画をされたのは和田さんだったことをお伝えいただきました。
    ぜひ、当時のことをお聞かせいただけましたらうれしいです。

    ●株式会社亜璃西社・代表 和田由美さん(以下、和田):
    そうね、我孫子さんは昨年お亡くなりになったので、もう少し早かったらお会いできたかもしれなかったわね。
    私は1979年、息子が3歳半の時に離婚してシングルマザーになりました。
    今となっては有名人や経営者になられている働く女性たちと、当時、助け合いの会として「いいふりこき倶楽部」を作って集まっていました。
    その中には、私も含めて、離婚をして女手一つでお子さんを育てながら働いている女性もいました。
    ちょうど、北海道が離婚率でいうと全国1位と言われたときでした。
    今ではどうなんでしょう?

    ●西川:
    はい、今でも北海道が上位に位置しています。
    最新の数字としては、1位・沖縄県、2位・宮崎県、3位・大阪府、4位・北海道、5位・福岡県です。
    ちょっと前には、北海道は沖縄県に次いで、2位と言われていました。

    [リンク]平成28年(2016)人口動態統計(確定数)の概況

    ●和田:
    いまでも、全国的に見ても、離婚が多いことに変わりはないようですね。
    1988年に亜璃西社を創業して、なにか北海道をテーマにしたノンフィクションを書けないかと考えたときに、北海道には離婚する女性が多いのはなぜだろうという、テーマが浮かびました。
    そこで、我孫子さんに出会い、取材をして本にできないかと依頼したのです。

    ●西川:
    和田さんご自身がシングルマザー当事者だったこと、北海道に根差したテーマという着想で、「離婚する女性たち」を企画されたのですね。
    私はひとり親支援についての取材記事を担当していますが、まだ当事者ではありません。
    ご著書を拝見しますと、我孫子さんは当時、独身だったようですね。
    正確に言うと、婚約まで行った相手がいたけれど破談になってしまった経緯も、取材先との共通点として紹介をされ、さりげない自己紹介になっていたと感じました。
    当事者ではないからこそ、客観的に見ることが出来るということと、いかに取材先に共感的に聞いて話を引き出すかという意味では、僭越なのですが切り口が似ているなと感じていました。
    本のテーマは「離婚と女性」なので、必ずしもひとり親ではない方の事例も掲載されていましたが、それぞれの事例の多様性には興味深く読ませていただいていました。
    特に、ウェブでは書けないような赤裸々な本音の部分についての描写については、やはりまだまだ単行本にはかなわないなと感じさせられました。

    ●和田:
    我孫子さんは公平な目線で社会情勢に合わせて良く調査し、データも本に乗せていましたね。

    ●西川:
    和田さんは、北海道に離婚が多い理由について、何かお気づきのことはありますか?

    ●和田:
    離婚が多いということは、きちんと籍を入れて結婚するからなんですよ。
    北海道に入植した人たちは、この土地で一旗揚げて故郷に錦を飾りたいという人もいれば、地元で家を継がなくてもいい次男や三男、犯罪者、駆け落ちなど、戦前に北海道に入った人たちにはいろんな事情があったようね。
    船乗りの夫の帰りを待つ妻、男性と一緒になって働く炭鉱婦、農家、様々な稼業の上で、妻としての内助の功もあれば、共に働く労働者同士でもあった。
    極寒の地という厳しい自然環境の中で、逆境のエネルギーを持った人たちが一生懸命に頑張っていたわけです。
    家を守る旧来の考え方や、男尊女卑的な思想から解放された、開拓地ならではの男女平等的な結婚の在り方があったようです。

    ●西川:
    なるほど、何かとしがらみの多い地元から逃れて、新天地で新しく生活を始めた開拓民たちの、訳ありだからこそのフロンティアスピリッツがあったのですね。
    ところで、離婚率が高い県について論じているネット記事がたくさんあるんですが、比較的、離婚率が高いのが沖縄、九州という事に着目し、その理由として、若年での妊娠がきっかけの結婚が多いのため、亭主関白が当たり前の土地柄、失業率が高いからと理由付けし、それと対照的に、北海道を除く豪雪地帯の山形県、新潟県の離婚率が低いのは、厳しい自然環境の中で家族の助け合いが必要で絆が深まるからでは?と推測されていました。
    北海道は寒冷地ですが離婚率が高いですよね。いろんな事情のある男女が共に厳しい環境の中で助け合っているはずなのに、何故でしょう?

    [リンク]マイナビウーマン 日本の離婚率の高い都道府県 Top10
    [リンク]カケコム 離婚率が高い・低い都道府県別ランキングトップ10

    ●和田:
    戦後、特に1970年代になると二世の時代になり、先代が切り開いた大地でのほほんとおおらかに育てられた世代になるわけですが、先代の血を受け継いで、経済的に厳しい環境の中でも家族を見捨てず耐えている人もいれば、ひとりで生きていくことを選択する女性も増え始めてきていました。
    80年代、90年代になると、暗黙のうちに成り立っていた社会的なルール、親のしつけといったことが徐々に崩れ始めてきました。
    昭和は、戦中戦後と社会的に厳しい時代ではあったのですが、人としてどうあるべきかということがまだ、社会には根付いていたはずなんです。
    時は平成になり、女性の社会進出が少しずつ進んできたこと、特に北海道の中心都市である札幌には、女性が働くところが多くあるということも、離婚が多い理由の一つではないかと思いますね。

    ●西川:
    先代から受け継いだ忍耐強さと、逆境に立ち向かうという精神は、離婚をして、一人で生きていくという選択に生かされてきているという事でしょうかね。

    ●和田:
    我孫子さんの本にも、統計からグラフで北海道の離婚率の推移について掲載し、取材先も、離婚を経験した女性たちの他にも、男性、行政関係や支援団体など多岐にわたっていてよく調べられていたと思いますよ。

    ●西川:
    はい、この本が30年ぐらい前に書かれていたとは思えないほど、現代の状況もあまり変わっていないなと思います。
    ひとり親支援制度については、民主党政権時に父子家庭にも児童扶養手当が拡充されるようになったことなど、若干、時の流れに応じて変わっているところはありますが、人の心理や置かれている環境というものは、数十年では変わらないのだなと思いました。

    ●和田:
    我孫子さんは事実を冷静に平たく見つめることが出来ること、時代の先を見る目を持った作家だったと思います。

    ●西川:
    様々な事情を抱えた取材先をテーマごとにまとめられていて、まずは「さまざまな離婚」、「恋する女たち」、「働く女たち」と紹介したところで、「北海道にはなぜ離婚が多いのか」というデータと有識者の意見をまとめた考察、再度取材を基にした「男たちはいま」と、その後の未来を思わせる「再婚する女たち」と、章立てされていました。
    当時、考えられるだけのあらゆる立場の方へ取材をされていることと、事実や流布されている噂話をうのみにするのではなく、さらに掘り下げている所がとても興味深かったです。

    ●和田:
    今現在のデータで終わるのではなく、北海道の女性は離婚をすると決めたら迷わない、きちんと結婚して籍を入れるのは、結婚式が会費制で行われて内地ほど費用が掛からないことも関係するのではないかという専門家の意見を聞いたうえで、それでも納得できないから、と明治時代にまでさかのぼって調べていますからね。

    ●西川:
    明治時代の方が今よりもはるかに離婚率が高かった、というデータから、現在の論調だけでは語りつくせない時代の変化や法律の改正と、同じ開拓地としてのアメリカとの共通点、本州のフェミニズム運動と北海道の捉え方の違いといった、比較対象を次々に変えて検証していくところは、納得させられるものばかりでした。
    ひとことで「北海道の女性は強い」だけでは、説明が足りないと直感でお感じになった我孫子さんの観察眼と探求心には、本当に敬服させられました。
    私は生粋の道産子でもありますから、北海道の女性の欠点は忍耐力がない、大雑把だ、自己主張が強いという記述には大いに反省させられましたし、長所としてあげられていた、男女ともゼロから始める風通しのいい関係がある、ということには、そうありたいなと願うところです。
    詳しくは、ぜひ多くの方にご著書をご覧になっていただきたいですね。

    ●和田:
    本を書いてから何十年もたってから、あの本が面白かったと言ってくれる人がいると知ったら、きっと我孫子さんは喜ばれたことでしょうね。

    ●西川:
    一目お会いしてみたかったですが、こうして我孫子さんに「離婚する女たち」の企画を依頼された和田さんにお会いして、当時の様子などをお伺いすることが出来て大変光栄でした。
    ご親切に、お時間を作っていただき、ありがとうございました。

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    投稿:   更新:2018/06/28

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