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【取材してきました vol.015】秋山怜史さん:第3回~シェアハウス運営はニッチな市場・編集後記~

投稿:   更新:2017/12/20

カテゴリー:離婚・別居 特集記事

シェアハウス運営で苦労されていること、取材して記者が感じたことをまとめました。どうぞご覧ください。

ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

今回は、シングルマザー向けシェアハウス「ペアレンティングホーム」、と、シングルマザー向けの不動産ポータルサイト「マザーポート」を運営する一級建築士事務所秋山立花の代表・秋山怜史(あきやま さとし)さんに、Skypeにてお話をお伺いしました。(この記事は、3回に分けて掲載いたします。)

←【第1回~僕の信じる『豊かさ』とは『選択肢が多く選べること』~】を読む
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シェアハウス運営の今後について

●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
札幌ではここ数年で、シェアハウス運営会社がシングルマザー向けシェアハウスを企画した例や、市民団体が元学生寮を利用してシングルマザー寮を運営しようとした例があるのですが、いずれも実現しなかったようです。
資金面や、入居者のニーズに合う物件ではなかったなどの問題点があったようですが、その点、すでに事業として成功されているペアレンティングホームは全国から注目されていると思うのですがいかがでしょうか?

●一級建築士事務所秋山立花代表・秋山怜史さん(以下、秋山):
シェアハウス運営については、苦戦していると思います。
そもそもシェアハウスがニッチな市場であることは否めません。
これから爆発的にニーズが大きくなるということはまずないです。
統計を見るとシェアハウスに暮らしたい人は30代女性のうち20%切るといわれています。
そもそも人口ボリュームのうち2割がターゲットであれば、そのうちシングルマザーに限定すると需要と供給のバランスが難しいのではないかと思います。

●西川:
そうなんですね。シングルマザーやプレシングルですと資金面や保証人の用意の問題で住宅を求めるときにハンデがある場合もあります。
私は普段、不動産会社管理部で勤務していますが、仲介業者から「シングルマザーで6歳から0歳までの5人の子連れの入居可能ですか」という問い合わせや、入居者さんから離婚で苗字が変わったという連絡、入居申し込みも別居の為・離婚の為・DVシェルターからの紹介という方も多くいらっしゃいます。
シングルマザーの入居申し込みについて賃貸物件のオーナーさんによっては受け入れをしない場合があり、上司にその理由を聞いてみると、「たくさん空きがあって、ぜひ入ってほしい」という物件と、「あと1戸しか空きがなく、騒音のクレームの多い物件なら子どものいる家庭の受け入れが難しい」といった個別の理由があるようです。
シングルマザー専用住宅が行政の受託事業としての寮以外がない札幌では、公団か一般賃貸住宅に住まいを求めるしかなく、ひとり親家庭としての再出発ハードルがあるのではないかと日々思っていました。
生活保護家庭であれば、上限はあるにしろ、家賃や必要経費については自治体が保護費として負担をしてくれると聞いています。
敷金・引越し費用・仲介手数料・火災保険料などの家賃以外の費用も保護金として支給されます。
もちろん毎月の水道光熱費や共益費は生活扶助から自分で払っていくことになりますので、「共益費を家賃に含めることはできますか」というお問い合わせもありました。
経済的に自立するということが大前提ではありますが、必要な時には公的な支援も利用できるということを、意外と知らない方も多いようです。

●秋山:
そうですね、いろんな選択肢があったほうがいいということですよね。
国土交通省では、高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など、民間賃貸住宅や空き家を活用した「新たな住宅セーフティーネット制度」が本格的に始まりました。今年10月25日に「住宅セーフティーネット法」の改正が施行されたのですが、それを利用して、空き家活用に充てるということもオーナーさんに提案することも考えられます。
空き家を賃貸住宅やシェアハウスとして改修工事を行う際に、公的補助が得られます。

[リンク]国土交通省 住宅セーフティーネット制度について

●西川:
なるほど。
ひとり親当事者側からの問題ばかりではなく、空き家問題の解決に、物件供給側の状況も整えていくことも可能かもしれませんね。

●秋山:
現在運営しているペアレンティングホームは、家賃設定がしっかりしてありますので、対象者の年収上位30%しか入れないことになります。
家賃面でのハードルは高いものの、福祉施設ではないということも名言しておりまして、不動産事業である以上、家賃の支払い能力のある人しか入れないということになっています。
私たちの考えは「経済的に自立するために就職できるように支援すること、家賃を払える立場にしよう」ということです。

(ペアレンティングホーム玉川学園・各部屋にロフトがついています)

今後の課題

●西川:
社会的ニーズのあるシングルマザー向けシェアハウスの運営の成功例についてお伺いしてきましたが、これまで困ったことや今後の課題などはありますでしょうか?

●秋山:
実は、集客は常に困っています。
シェアハウスを借りたい人を集めるために、それもあってマザーポートを立ち上げました。
PRのために自治体や弁護士にも話にいきますし、これは常に課題であり続けます。

●西川:
理想的なサービスだと感じますが、満室ではないこともあるのでしょうか?

●秋山:
稼働率は一般不動産なら90%を越えていかなくちゃなりませんが、ペアレンティングホームは全体で平均80%弱です。
不動産投資という意味ではあまりよくないです。
これをもって新しいオーナーに実績を提示する意味では弱いのです。
ですから、普通の不動産投資としては実入りが少ないと言っています。

●西川:
これまではそれでもご提供いただいたオーナーさんがいらっしゃったんですね。
きっと、社会的意義のある活動としてご賛同いただいたのではないでしょうか。
シェアハウスとして利用する物件にもある程度、必要な条件があるのでしょうか?

●秋山:
基本的に元の物件状態がいいということも絶対必要です。
清潔であるとか、一人で暮らすより子どももいますから、ある程度の広さも必要です。
建築基準法に適用するかなども包括的にみていきます。

●西川:
シェアハウスですから、キッチンやお風呂などの共有部分の利用について、入居者のお子さんの生活スタイルによって時間的ニーズも変わってくるのではないかと感じるのですが、例えば0歳のお子さんと高校生では活動時間帯も変わってきたりしますよね。

●秋山:
お子さんの年齢ですが、シェアハウスは小学校低学年ぐらいまでを想定しておりまして、高校生など大きいお子さんに関しては全く考えていないんです。
子どもの育ちにおいてシェアハウスが適切な時期と、そうではない時期があるので、お子さんの成長に応じて適切な住まいを考えていくということがベストです。
ですから、これまでに卒業されている入居者さんもいました。

●西川:
では入居されるときに、卒業があることについても予め提示してあるんですね。

●秋山:
もちろんです。

●西川:
次の住まいを探されるときに、物件の紹介などもしていただけそうでしょうか?

●秋山:
エリアによってはご紹介も可能です。

●西川:
ちなみにですが、地方自治体ではひとり親に移住支援をしているようですが、これまでにその制度を利用した方はいらっしゃいますでしょうか?

●秋山:
自治体の移住支援については知っていますが、これまでに利用した方にはお会いしたことはないですね。
シェアハウス運営といった観点でいうと、地方では都内と比べて家賃が安いので、同じような価格帯で一軒家が借りられるかもしれませんから、シェアハウスがベストかというとそうではない場合もあります。

●西川:
なるほど、シングルマザー向けシェアハウスが必要とされる地域性も関係あるのですね。
北海道でもぜひ、ペアレンティングホームが実現できたらうれしいです。

●秋山:
設計のお仕事は全国どこでもお受けしていますし、札幌にもスタッフがいる関係で何度かお伺いしたことがあります。
ニーズがあればどこでも可能だと思います。

●西川:
ありがとうございます。
ペアレンティングホームを必要とされているシングルマザーさんもきっとたくさんいますし、物件オーナーさんも、所有されている物件を何か社会貢献的な活動に役立てたい方もたくさんいると思います。
地方でもシェアハウス運営に関心ある団体もあるでしょうし、これからの事業拡大やご活躍を期待しています。
このたびは、お話をお聞かせいただきありがとうございました。

(ペアレンティングホーム金沢文庫には書庫も)

編集後記

今回は、「シングルマザー向けシェアハウス」と「シングルマザー向け住宅についての情報サイト」を運営をされている企業の事例をご紹介いたしました。

驚いたのは、ひとり親支援に関わる方は、たいてい当事者やそれにかかわる仕事をきっかけになにか事業をされている方が多い中、秋山さんはご自身の会社の『社会と人生に新しい選択肢を提案する』という理念を実現させるための社会的問題解決の観点から、6年前に各分野の専門家と協力の上、シェアハウスの運営をされてこられたということでした。

これまで、ウタリくらぶの取材を通して、当事者や支援団体、行政側の担当者にお会いしてきましたが、それぞれご自身の立場からの目線で活動をされている方が多い中、秋山さんはより社会的価値という広い視点でこの事業に取り組まれているのを感じました。
特に、住まいは環境であり、どこに誰と住むのか、どのような家なのかはお子さんの育ちや親の生活にも大きな影響があると感じています。

取材当日は、ご自宅とSkypeをつながせていただき、時折一歳のお子さんが画面に写り、お父さんとしての姿も少し垣間見られました。

私自身も今年は縁あって住宅に関わる仕事をしており、日々、家というのは人の生活そのものであると実感している所でした。
シングルマザー向けシェアハウスは、お子さんの成長に伴って卒業があるとのこと。
必要な時期に必要な場所を得るということ大切さも学びました。

このサイト名に冠している「ウタリ」とは、アイヌ語で親族・同胞・仲間という意味があります。
個人主義で必要以上に干渉しない都会の生活はしがらみを嫌う人にとっては過ごしやすいかもしれませんが、何か困ったことがあったときに、助け合いの精神が発揮できる仲間を持つことが大切です。
特に子育てにおいては親だけでは解決のできない問題もたくさんあり、実際に手を差し伸べてもらえたこと、心の支えになってくれたこと、情報をくれたことなど、その時々で必要な支援が得られる時、子育てにおいて前向きになり、生活に潤いが出るなど多くの恩恵が得られます。

ひとり親を取り巻く環境は、身内の支援がすぐに得られない核家族の場合、血縁関係に捉われない仲間の存在は大きな助けになるに違いありません。
そのためには、条件として経済的自立が重要です。

支援というと、行政からの金銭的援助を想定しがちですが、そこは必要な時には利用しつつ、自らの力で生活していく力を持つためにも、同じように働くひとり親同士の助け合いや、専門家のサービスに、対価を払って利用することも必要でしょう。
シングルマザー向けシェアハウスや寮などの専用住宅を運営することへの課題も山積されていますが、国内初の先進事例として後に続く者に希望を与える存在としてあり続けてほしいと感じました。(ウタリくらぶ記者・西川明子

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秋山怜史(あきやま さとし)さんプロフィール>

平成20年に一級建築士事務所秋山立花を設立。平成26年より横浜国立大学非常勤講師、平成27年より神奈川県地方創生推進会議委員をつとめる。
『社会と人生に新しい選択肢を提案する』を理念とし、建築・庭園・内装・街づくりの企画・設計・監理、家具の企画・設計・製作などを手掛ける。
1歳のお子さんを育児中の父親。(2017年11月現在)

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投稿:   更新:2017/12/20

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