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    【ひとり親事例紹介 vol.011】 波柴純子さん:第3回~シングルマザー支援やめます?!~

    投稿:   更新:2017/11/08

    カテゴリー:横浜市 生活・住まい 離婚・別居 神奈川県 地域別情報 特集記事

    ファイナンシャル・プランナーであられる波柴さんへの取材記事も最終回となりました。波柴さんからのメッセージ、どうぞご覧ください。

    ウタリくらぶでは、実際にひとり親当事者や支援者である方にもインタビューを重ね、家庭生活や子育て、働き方についての生の声をお聞かせいただき、読者の皆様により身近な情報をお伝えしています。ウタリくらぶ担当記者・西川明子です。

    今回お話を聞かせていただいた方は、ファイナンシャル・プランナーとしてシングルマザー向けのマネー学講座やライフ&マネープランのアドバイスのお仕事をされている元シングルマザー・波柴純子さんです。

    ひとり親家庭で育ち、さらにご自身がシングルマザーになった時に、経済的な不安感を感じ、ファイナンシャル・プランニングの勉強を始めることで、気付きを得たライフプランとお金についての考え方と、事業内容について、さらにこれからのお仕事の展望についてお話をお伺いいたしました。(この記事は3回に分けて掲載いたします。)

    ←【第1回~ひとり親家庭で育って実感したこと~】を読む
    ←【第2回~時代はもう女性の自立促進の流れに~】を読む

    ***

    将来を担う子どもたちにも金融リテラシーを

    ●ウタリくらぶ記者・西川明子(以下、西川):
    高度経済成長期に生まれた祖父母世代から育てられた、現在子育てをするわたしたち親が、右肩上がりの経済成長の時代の考え方で刷り込まれたお金に対する感覚を見直す時代になってきましたよね。
    でも、なかなか家庭で子どもに対してどのように金銭感覚について伝えたらよいのか悩むところです。

    ●波柴純子さん(以下、波柴):
    はい。現時点で学校での金融リテラシー教育はまだ普及していません。
    例えば、金融庁が2016年に発表した「平成27事務年度 金融レポート」では、「貯蓄から資産形成へ」という項目があげられましたが、その背景は以外と知られていません。
    日本に厚生年金保険法が制定され、民間企業で働く人の年金制度が始まったのは、1954年のことです。
    当時の平均寿命は、男性が63.41歳、女性が67.69歳でした。
    60歳から年金受給がスタートしても、男性が受け取れるのは、平均でわずか3年程度にすぎなかったのです。
    今のように、平均寿命が男女ともに80歳を超えている状況下では、公的年金の受給開始年齢が引き上げられるのは当然ですし、国も今の制度設計のままでは、もはや公的年金の未来が厳しいことを知っています。
    そういう時代だからこそ、「貯蓄から資産形成へ」の意味を、私たち一人一人が、改めて考えてみる必要があるのです。
    現状として、金融庁では、2012年11月に有識者・関係省庁・関係団体をメンバーとする「金融経済教育研究会」を設置して今後の金融経済教育のあり方について検討を行い、2013 年4 月に研究会報告書を公表しました。
    この報告書の中で「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」が示されました。
    その内容は、「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」の4分野に分かれます。

    [参考PDF]日本銀行「金融リテラシーマップ」

    なぜ今このような金融教育の方針が打ち出されているかというと「資産形成」という言葉だけが一人歩きし、基本的な投資への知識や生活設計スキルがなおざりになっていることへの危惧があります。

    ●西川:
    心当たりがありますね。
    コツコツ社会人時代にためていた貯金を銀行に定期預金に入れていても利息があまりかないので、直ぐに使わない資金なら投資信託しませんかとよくわからないまま勧められて、結局ライブドアショックなどでかなり損をしました。

    ●波柴:
    それも、「損」と考えるかどうかは運用方針次第です。
    そもそも投資というものは短期で目減りする可能性はあるもの。
    その前提を知った上で、運用可能な期間に合わせた対象に投資するべきです。
    そのような知識の習得も含め、金融庁、消費者庁、文部科学省の有識者と、金融関係団体が「金融経済教育推進会議」を2013年に設置しました。
    ここでは、子どもたちの年齢に合わせたお金に関する知識と教育について提案されています。
    将来、学校教育の中にも、必修科目として取り入れていくかもしれません。
    幼い時から金融リテラシーを持つようになれば、人生設計とお金という目線で、お金の大切さを感じることが出来ますし、もし進学するときに奨学金を借りるかもしれないという選択を迫られたとき、本当にその投資は自分の将来で本当にやりたいことなのかと考えることが出来ます。
    安易に借りて後で後悔したり、返済苦に陥ったりすることも防げるかもしれません。

    [参考]金融広報中央委員会「知るぽると」
    [参考]日経ビジネス「森金融庁長官の証券会社への怒りは本気か」

    ●西川:
    すでに、国家レベルでの計画が進んでいるのですね。
    ぜひ学校教育で金融について学べるようにしてほしいです。
    もし、子どもたちの金融リテラシーが当たり前の世の中になったら「オレオレ詐欺」みたいな犯罪も成り立たなくなるかもしれませんね。

    シングルマザー支援をやめます

    ●西川:
    この取材を申し入れた後に、波柴さんが「シングルマザー支援をやめる」というのを目にしてびっくりしました。

    ●波柴:
    「シングルマザーの支援をやめる」というより、より広い対象に向けた発信をしていくという意味合いです。
    2013年に独立して以来「起業」「シングルマザー」をテーマにサービスを提供してきたのですが、今後は、わたしの屋号が意味するところの原点、「ライフプラン」を主要テーマとして掲げていこうと思いました。

    ●西川:
    波柴さんご自身も当事者として悩まれたことから始まったお仕事ですが、活動をされていく中で、特定の層へむけてではなく、必要としている方へ情報を発信するというステージにシフトされるのですね。

    ●波柴:
    はい、独立した5年前にはシングルマザー向けのサポートは「福祉」の領域がほとんどでしたが、理事を勤めた一般社団法人日本シングルマザー支援協会の発信や、世の中の流れなどにより明確に自立を目指す人のための体制が徐々に浸透してきています。
    ひとり親を対象とする専門家も増え、それぞれの分野も多岐に渡ってきていますので、私よりもっと専門性の高い人がふさわしいと思える案件についてはその方々にお任せし、それらの解決策を必要としているクライアントには信頼出来る提携先としてご紹介できる体制を整えています。
    逆に、「シングルマザーではないのですが、相談できますか」というお問合せも増えています。
    自分自身も再婚して気づいたのは、時代が変化しているのにも関わらず従来の「良妻賢母」の幻想に囚われていたり、パートナーとの関係性によって本来の自立心を抑制し苦しい思いをしていたりする女性も多いということです。
    精神的な自立経済的な自立は実は密接に関係しています。
    そこに踏み込むことは新たな挑戦ではありますが、自立を目指す女性を対象とするということでは変わらぬスタンスでお役に立てたらと思っています。
    これはシングルマザー支援で経験したことですが、女性が「わたし、自立していいんだ! 自立できるんだ!」と気づいた時から秘めた力が開花し始め、とても活き活きした表情になるのです。そんな瞬間にたくさん立ち会っていけたら、と思っています。

    ●西川:
    ご自身の一番得意とすることに特化したサービスを提供することにより、波柴さんのめざす「金融リテラシー」がもっと多くの方の中に育ち、人生設計やその方のご家庭で育つ子どもたちの未来においても、きっと良い影響があるのではないかと感じました。
    本日は、お話を聞かせていただきありがとうございました。

    編集後記

    横浜と札幌とでは物理的な距離がありますが、Skypeを通じて遠隔地の方とも顔を見てお話しできる便利な時代になりました。

    今回、共通の知人からひとり親支援者として紹介をされたので、全くの初対面だったにもかかわらず、気さくにご対応いただいた波柴さん。

    実は、お互い乳幼児の育児中に使用していたベビースリングブランドが同じだったという共通点や、年齢も同世代ということから、初めてお話させていただいたとは思えないぐらい親近感を感じました。

    ご自身がひとり親家庭の子どもとして育ち、またご自身も離婚を経験してシングルマザーになり、悩んだことをきっかけに学びを仕事にされるまでに高め、当事者同士助けになるプログラムを提供するという活動をされてこられました。
    くしくもこの取材の時期に、これまでの経験を活かし「シングルマザーに特化した活動をやめる」という決断をされることで、あらたなステージへ登られるとのこと。
    それにはご自身の再婚という生活の変化や、日々のクライアントと接する中での気づきが関係しているようです。

    ひとり親を取り巻く問題は、社会全体の問題の縮図であるとする、支援団体代表の言葉を引用され、渦中にいながらご自身の人生を切り開かれてきたロールモデルとして、これからも多くの女性たちへ希望ある未来について人生設計をするお手伝いをされていかれることでしょう。

    行政等からのひとり親支援策だけに頼り切るのではなく、自分で稼いでいく力と、それをもとに子どもとの生活をより良いものにしていくための知恵は、専門家から学ぶことが出来ます。

    民間でできること、行政ができることがあり、何をどのように生活にいかしていくかは、自らが情報をキャッチするアンテナを高くしている必要があると感じました。

    (ウタリくらぶ記者・西川明子

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    波柴純子さんプロフィール>

    1973年生まれ。ファイナンシャル・プランナー(AFP)、Cras-i design(クラシデザイン)代表。
    実父と1歳の時に死別し、ひとり親家庭の子どもとして育つ。
    ご自身も娘さんが3歳の時にシングルマザーとなり、経済的不安をきっかけに、ファイナンシャル・プランニングの勉強を始める。
    これからの人生とお金の流れについて学ぶことで漠然とした不安が具体的な目標に変わることを体感し、経済的自立と実務経験を積むために金融機関に転職する。
    お金の悩みや不安を解決するために、金融商品だけではなく働き方、自己投資、ライフスタイルに対する価値観などにアプローチする必要を感じ2013年に独立。
    2015年再婚・第2子出産後は様々な働き方、家族のあり方の中で女性が持つべき金融リテラシーをテーマにセミナー・研修・個別相談を行っている。

    【参考リンク】

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